小関ゼミ 非営利マネジメント/マーケティングの世界へようこそ
 

2010年 ゼミ合宿

★合宿計画

☆報告 第1日

★報告 第2日

★報告 第3日

今回は京都にある企業とNGOを訪問し、お話をうかがってきました。
多くの方に、たいへんお世話になりました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

合宿の訪問先は、学生が自分たちで行きたい団体4ヶ所を選びました。
今回は、まず「京都に行きたい」から始まって、京都ならではの企業やNGOを訪問しようということになりました。
ゼミ内には「貧困問題/国際協力」チームと、「CSR」チームがあり、各チームがそれぞれのテーマに沿って2団体ずつ訪問先を選びました。
「貧困問題/国際協力」チームは、京都発の国際協力活動を展開する「公益社団法人 日本国際民間協力会(NICCO)」と、日本でBOPビジネス※を最初に手がけたヤクルトを訪問しました。NICCOの事務所に訪問し、スタッフの方にお話をうかがいました。ヤクルトは本社京都工場を訪問し、工場見学を行いました。また後日、個別の質問にも丁寧に答えていただきました。
(※BOP(Base of the Pyramid)ビジネスとは、貧困層を対象として商品やサービスを提供する事業のことで、貧困削減に期待が寄せられています。)
他方「CSR」チームは、京都ならではの事業ということで、室町時代から続く老舗の呉服店「ゑり善」本店を訪問し、店内を見学するとともに、呉服店のCSRをめぐるお話をうかがいました。また、サントリーの京都工場を見学し、先進的な環境対策に驚かされました。後日、質問にも丁寧に答えていただきました。対応していただいた企業/NGOの皆様、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。ご協力に深く感謝申し上げます。
なお、この現地訪問は、明治大学経営学部の教育GPプログラム「知恵創造型人材の育成」の一環として行われたことを申し添えます。

学生自身が直接、NPOと連絡をとり、訪問の了解を得て日程を調整し、質問項目を事前に送るなど、訪問の準備を行いました。終了後は、訪問先団体の紹介文と、感想文を書いて、訪問先の方にお送りしました。下記の紹介文と感想文は、訪問先の方に事前に内容を確認していただいた上でウェブ上に掲載しました。
合宿係としてツアーの手配をした学生は、料金の徴収や会計など、いろいろとたいへんな作業を引き受けてくれました。みなさんありがとう。

NPOへの訪問に加えて、京都観光に行き、楽しんできました。
にぎやかで楽しい3日間となりました。皆さんお疲れさま。
以下の文章は、学生による簡単な報告と感想文です。 (小関)


★合宿計画


日時:9月15日(水)〜17日(金) 2泊3日
行き先:京都府京都市、宇治市、長岡京市
参加者:教員(小関)、3年生13名(計14名)

●訪問先
(1)(株)ヤクルト本社京都工場(京都府宇治市槇島町十八38)
(2)公益社団法人日本国際民間協力会NICCO(京都市中京区六角通新町西入西六角町101)
(3)サントリーホールディングス(株)京都ビール工場(長岡京市調子3−1−1)
(4)(株)ゑり善本店(京都市下京区四条河原町御旅町49)

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☆報告 第1日


1日の流れ


8:50 東京駅集合
9:03 東京駅発
14:00 (株)ヤクルト本社京都工場を見学
18:00 ホテル着、夕食、京都市内ホテルで泊

(株)ヤクルト本社京都工場を見学

・はじめに
今回私たちは京都にあるヤクルト工場に訪問した。そこでは「ミルミル」の生産工程などを知ることができた。工場見学ということもあり、詳しい質問はその場ではできなかったがヤクルト本社に質問内容を送り、回答をいただいたのでその内容をこのレポートにてまとめる。

・聞き取り調査
1 Q、貴社は年間莫大な量の飲料生産を行っておりますが、容器回収など環境に特化した生産を行っているか。
→リサイクル法に基づき、自社とは関係のない業者によって対応される。またCO2削減目的として、太陽光・風力発電も展開。さらに輸送車も排ガス規制などに基づき生産された商品の運搬を行っている。
→受注生産方式をとっているので、ロスが最小限になるようにしている(注1)。自社でのチルド配送もおこなっている。

3 Q、HPより、1972年から貴社は「愛の訪問活動」というボランティア活動を行っていることが分かったが、ボランティア活動も経営活動の一環として行っているのか。
→ヤクルトレディという商品を届ける販売所の方(良くバイクに乗っているのを見かける)がお年寄りの安否確認なども含めて宅配を行っている。これは経営活動の一環と位置づけている。

4 Q、化粧品を生産するなど、今後多角化戦略をとる計画はあるのか。
→医薬品・化粧品などを展開しているため、今のところはなし。

5 Q、消費者に知らせたい貴社の社会貢献活動を教えて頂きたい。
→社会環境レポートがHP上に載っているのでそちらも参考に。
 各地区の販売会社がそれぞれの理念に基づいて、売上の一部で盲導犬や車いす、介護訪問用車輌を購入して自治体に寄付するといった活動をおこなっている。

・学生の感想
今回工場見学をして工場の衛生管理の徹底、品質管理というものを知ることができた。またヤクルト本社からの回答である、CSRの一環について環境問題を考えていることがわかる。CO2の削減というのは今では当たり前のことのようになっているが、環境経営という視点から考えたときに、必ずしも自社の利益にはつながらない。今では 低炭素社会(注2)という考えも出てきている現状で今後どのようにヤクルト本社が対応してくるのか楽しみである。(作成:秋田 隼佑)


(注1)チルド。製造から配達、販売までを低温(0〜5℃もしくは0〜10℃)で管理されている製品のことをチルド製品と呼ぶ。チルド食品およびチルド製品には、牛乳やヨーグルト、果汁飲料などがありる。
コンビニでは、温度帯別共同配送というシステムをとっており、チルド製品はチルド製品ごとに一箇所の配送センターに集められ、そこから店舗に配送される。

(注2)低炭素社会:同じ効用を発揮する製品であれば、温室効果ガスの排出の小さいほうが優先される。もしくは製品開発や都市計画の際に、温室効果ガスの排出を抑制することが十分に盛り込まれる社会。


  


夜は、みんなで焼肉を食べに行き、大いに盛り上がりました。


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★報告 第2日


1日の流れ

9:00 ホテルロビー集合、出発
9:33 京都駅発
10:00 公益社団法人日本国際民間協力会NICCOを訪問、インタビュー
12:09 京都駅発
13:00 サントリーホールディングス(株)京都ビール工場を見学
18:00 ホテル着、夕食、京都市内ホテルで泊

公益社団法人日本国際民間協力会NICCO訪問


1.活動内容
 公益社団法人日本国際民間協力会(NICCO)は京都生まれ、京都育ちの日本で最も長い歴史と実績を持つ国際協力NGOの一つです。
「京の町家から、世界に笑顔を!」をテーマに、設立以来約30年にわたって途上国の人々が自分たちの力で生きてゆくことを目指して様々な自立支援プロジェクトを行っており、また、海外だけでなく国内においても、滋賀県竜王町の琵琶湖モデルファーム事業や国際協力分野に寄与する人材を育成するためのインターン制度等を実施しています。

<海外活動の詳細>
1)緊急災害支援
災害が発生した場合、24時間以内の初動開始・72時間以内の現地到着を基本に救援活動を行っています。近年の実施事業として、2009年には中国四川大地震被災者支援、パレスチナ・ガザ地区人道支援、インドネシアスマトラ島パダン沖地震被災者支援、また2010年に入ってからはハイチ地震被災者支援、パキスタン水害被災者支援など。

2)長期的自立支援
恒常的な貧困状態にある人々に対して、パーマカルチャー(持続可能な生活環境を作り出すデザイン体系)に基づく環境保全型有機農業技術支援や、職業訓練・教育支援を行っています。
@ヨルダン   =イラク難民支援と女性の自立支援
Aパレスチナ  =オリーブ農家支援
Bイラン    =アフガン難民就職・帰還支援
Cアフガニスタン =女性を対象とした識字教室・IT訓練
Dマラウイ   =食の安全保障の確立と衛生改善

上記のように、たくさんの事業を実施されているようですが、今回の訪問ではイランのアフガン難民の人々への就職・帰還支援の事業を中心にお話を御伺いしました。


2.聞き取り調査

 1979年の旧ソビエト連邦によるアフガニスタン侵攻以来、イランには大勢のアフガン難民が発生しています。イラン国内では難民の就労に制限があるため、NICCOは難民がアフガニスタンに帰還した後にすぐに就職できるよう、就職のためのITや英語の訓練、インターン制度による実務研修を行っています。また、難民の中にはイランで生まれ育ったために祖国を知らずに20代となっている人々も多く、「祖国へ帰るのは恐いのではないか。」という不安を考慮し、アフガニスタンから講師を招いて彼らの祖国であるアフガニスタンの現状や就職状況を伝えて帰還に対する意欲を高めるといった取組みも実施しています。
 しかし、アフガニスタンの治安悪化により、安全面はもとより、帰還しても生活に困らないほどの収入が得られる仕事は限られている、という懸念もあるようです。
 そのため、優秀な人材を育て、帰還後すぐに仕事を見つけられるようにすることを目標に置いて、難民の将来を見据えた事業を実施しているようです。


以下、質疑応答。

Q.民間企業との連携について詳しく教えてください。
A.企業はCSR活動の一環として、NGO活動に対する助成を行っており、NICCOがその助成に対して申請書を提出し、企業の意向とマッチすれば助成してくれます。また企業がNICCOの支援事業に対して直接ご寄付いただく場合もあり、例えば2009年10月に発生したスマトラ島パダン沖地震での被災者支援事業ではオムロン株式会社さんからまとまった寄付金をいただきました。さらに、企業とNGOがそれぞれの長所を生かし協働で事業を行う場合もあります。例えば、住友化学株式会社さんはマラリア予防のための防虫蚊帳(オリセットネット)を作っていますが、住友化学株式会社さんがその蚊帳を寄贈し、NICCOはアフリカのマラウイでその蚊帳を住民に配布し、さらに正しい蚊帳の使い方を教えることでマラリアの予防効果を高めるといった連携により、マラリア対策の事業を進めています。

Q.アフガニスタンやイランに行く際に、日本のNGOだけでなく諸外国のNGOもあると思いますが、NICCOが撤退した後に他国のNGOが違う指導をして混乱することはあるのでしょうか。
A.現在、NICCOが事業を行っているイラン・マシャッド市には、NICCO以外の国際NGOは活動していません。以前は、他国のNGOも活動していましたが、その時は定期的にミーティングを行い、お互いの事業について情報共有を図っていました。
また、一般的に緊急支援の際は他国のNGOもたくさん入ってきますが、国連が分野ごとにクラスターミーティングを開催し、その場でお互いの支援内容について情報共有を行い、支援が重複しないよう調整しているので、混乱はありません。

Q.実践訓練コースに女性も参加するのでしょうか。
A.希望者を募っているので、こちらが決めている訳ではないのですが、イランの職業訓練の参加は女性の方が多く約6割を占めています。現地のインターンもほとんどが女性です。

Q.会員や寄付者の方々からの寄付金の使い道に支援国と国内事業の活動費とありますが、具体的にどのような事や物に使われているのでしょうか。
A.海外での事業を支えるために、国内では事業を管理するための経費がどうしても発生します。例えば、事務所の家賃、会計処理を行うスタッフの人件費などです。これは、NICCOが法人として事業運営を行うために必要不可欠な経費です。
NICCOは、ご寄付いただいたお金をできる限り海外の事業のために使いたい、と考えており、上記の管理経費は必要最小限に抑える努力をしています。例年、管理経費は、全支出の約5〜8%程度です。

Q.お金だけでなく支援物資なども会員や寄付者の方々から受けていますか。
A.原則として支援物資のご寄贈は受け付けておりません。物資を日本で受けた場合、その輸送のためのコストがかかります。また、現地で購入すれば、購入のために支払ったお金は現地の商人を介して現地で流通するため、現地での支援物資の購入そのものも、現地に役立つ、と考えているからです。

Q.ホームページを見ると、『京の町家から』ということを強調していますが、京都にあるNICCOの特徴ある海外支援などがあれば教えて欲しいです。
A.海外支援そのものというより、海外の事業を支える国内の活動として、@京都ならではの企業との連携(京都の企業も参画する「京都CSR研究会」への参加や、オムロン株式会社さんの社員OBの方のボランティア協力など)、A京都ならではのファンドレイジング活動(芸術と文化の作品展「チャリティ・オークション」への後援など)、B京都・関西のNGOとの連携(国際協力ステーション、ワンワールドフェスティバルといった国際協力イベントへの参加など)が挙げられると思います。

Q.ただ物資を提供するのではなく、途上国の人々の職業訓練や人材育成に力を入れていますが、そのやりがいや難しさを教えてください。
A.やはり大きな点は、職業訓練や人材育成では、受益者自身が自立していくための技術を教えていくことに、時間や受益者自身の努力が必要で、そのことを受益者に理解してもらうのには時間はかかりますし、逆に、受益者ががんばって自立に向けて努力をしようとしているところを見ると、自分も一緒にがんばりたい、何とかしてその人の技術が向上するよう支援してあげたい、と思います。


3.感想
 単なるその場しのぎの経済的支援ではなく、職業訓練など将来を見据えた持続的な成長が望める事業を実施しており、真の国際協力というものを知ることができたと思います。
 また、祖国を知らないまま成人を迎えている人々が大勢いるという現状を知り驚きましたが、お話を聞かせていただいた後に、難民の人々の夢を次々にテロップに流した映像を拝見し、その中に将来アフガンで何かをしたい、こんな仕事がしたいといった人が多数いて、NICCOさんが行っている事業の成果の象徴であると非常に感銘を受けました。
 質問にお答えいただいた中に、支援物資を受け付けていない理由として、現地で購入すればそのお金が現地の商人のものとなり、それが現地で流通するため、支援物資そのものが役立つということに加え一石二鳥の貢献ができるというお話が印象的でした。    
お金を与えるだけではその国や現地の人々の本当のためにはならないということをこれまでの研究で学んでいましたが、物資を提供することに関し、それを購入するときから貢献できることがあるという発想は全くなかったため、その考えには脱帽しました。

今回の訪問は国際協力に関する団体・企業として三つ目となりますが、今まで学んできたことに加え更に発展した考えが芽生え、国際協力という研究テーマに対し新たな感じ方を得ることができ大変有意義な訪問をすることができました。
NICCOさん、ご多忙の中貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。心より感謝申し上げます。(作成:小川可南子)


  

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サントリーホールディングス(株)京都ビール工場を見学訪問

9月16日(木)、サントリー京都ビール工場 (京都府・長岡京市)を訪問し、施設の紹介とお話を伺ってきました。

(1)組織・活動概要

サントリーホールディングス株式会社(以下:サントリー)は1899年の創業以来、ウイスキーやビール、さらには清涼飲料など、人々の日々の生活を心豊かに彩る商品を届けることを使命とし、常に価値のフロンティアへの挑戦を繰り返す、日本を代表する総合酒類食品企業である。今日ではその領域を更に拡げ、健康食品・外食・花など、多彩な事業を展開する企業グループとなっている。
2003年、サントリーグループは「人と自然と響きあう」をグループ企業理念として定め、お客様のニーズにもとづいて最高品質の商品・サービスをお届けするだけでなく、地球環境の保全にも努めている。さらには、さまざまな分野で社会貢献にも取り組み、真に豊かな社会の実現に貢献したいという理念のもと、よき企業市民として活動していきたいと考え、CSR活動にも積極的に取り組んでいる。

サントリー京都ビール工場は、このようなサントリーの企業理念の下、1969年にサントリービール第2の生産拠点として、歴史ある京都・長岡京市に開設された。環境と調和するビール工場を目指し、「リデュース・リユース・リサイクル(3R)推進功労者等表彰」において、2008年に内閣総理大臣賞を受賞している。

(2) 聞き取り調査

(質問:Q)1.サントリーの京都工場は、100%リデュース・リユース・リサイクルを行っていて、ゴミを出さない工場だとお聞きしました。いつごろから、京都工場はゴミを出さないという活動を行っているのでしょうか?

(回答:A)以前より、再資源化に向けた活動は行っていましたが、実績として100%再資源化を達成したのは1998年です。

(Q)水資源の保全や廃棄物の削減など、サントリー様はCSR活動を通してとても大きな社会貢献をなされていますが、逆に、CSR活動を通して企業内にはどのような影響があったのでしょうか?
(A)社員のCSR(環境)マインドの醸成につながるとともに、環境の時代における企業力の基盤強化になると考えております。具体的には、エコの要素や価値を取り込んだ商品・サービスの開発などはその一例と考えております。
(Q)他の企業や、NPO法人などと協働でCSR活動に取り組んでいますか?もし協働している企業や法人があれば、具体的にどんなところとパートナーシップを組んでいるのか教えていただきたいです。

(A)環境の分野で、現在、コラボレーション(協働)しているNPO、NGOなどはございません。これは、ただ単に資金を提供することで環境問題にアプローチするのではなく、社員自ら考え、社会問題を解決していきたいという想いから、このような形をとらせていただいております。
今後とも皆様にお喜びいただけるような製品づくり、企業活動に努めてまいりますので、一層のご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

(3) 学生の感想

  • 再資源化率100%維持の取り組みの説明が印象的でした。工場の規模から考えて、全くゴミを出さずに稼働することは大変なことだと思う。前期に学んだ生物多様性の保全にも高い意識を配ったすばらしい企業だと思った。
  • とても大きな企業なので、CSR活動において、NPO法人等とパートナーシップを組んでいないのは驚いた。パートナーシップを組まずにここまで大きなCSR活動を行い、さらにその成果をあげるのは素晴らしいことだと思う。しかし、CSR活動が急速に普及する今日、グローバルな視点でさらに成長するには、技術革新だけではなく戦略的なパートナーシップをとる必要があるようにも感じた。
  • CSRビジョンの「水と生きる」という啓発活動からも分かるように、とにかく水の品質管理を徹底している点に驚いた。ビールの92%は水ということで、この水の品質を安定させることで素材のうまみが際立つという説明をされていたが、プレミアム・モルツを試飲させていただいて、それを実感することが出来ました。本当に楽しくサントリーの企業信念やCSR活動について学べたので良かったです。

サントリー様、お忙しい中インタビューに応じていただき、まことにありがとうございました。ご協力に深く感謝申し上げます。(作成:村田大夢)

  

☆報告 第3日


1日の流れ


9:00 ホテルロビー集合、出発
9:29 京都駅発
10:00 (株)ゑり善本店を訪問、インタビュー
16:29 京都駅発
19:10 東京駅着、解散

(株)ゑり善本店を訪問


(1)組織、活動概要
創業は四百二十年余り昔、天正12年に遡り、「当社は専門店である。したがって最も大切なことは、人と人との繋がりである」のゑり善の先人の言葉で言い表せるように、ただ販売するだけでなく、きものの着こなしやTPOのアドバイスなど様々なフォローによるアフターケアーも充実しており、CS(顧客満足度)の向上に努めている。

(2)聞き取り調査
Q:呉服店のCSRとなるとイメージがわきにくいのですが、ゑり善さんではCSRを行っているのでしょうか。
A:、日本のCSRの原点として再認識されている「実の商人は、先も立、我も立つことを思うなり」と、実にシンプルな言葉でCSRの本質的な精神を表現した石田梅岩や、近江商人の「売り手良し、買い手良し、世間良し」の「三方良し」の考え方に近い形でCSRを行っているのではないでしょうか。社会、市場に対しては適正な価格と品質の良さをモットーに時代の流れが変遷しつつある現代に着物を装う満足感、喜びを提供し、TPO、コーディネートの相談も承り、取引先に対しても事業を継続することにより和装産業の活性につながり、また染織技術の継承と発展の一翼にもなっています。

Q:染色に使う材料の再利用など環境保全に貢献するようなコスト削減には取り組んでいるのでしょうか。
A:染色に使う材料の再利用は行っていませんが、着物の特徴が結果的にエコなサイクルを生み出していると考えます。着物の仕立てでは洋服や他の民族衣装に比べ裁ちが少ないため、貴重な素材を有効に活用することができ、このことが結果的にエコにつながっているのではないでしょうか。また着物を購入されたお客様によっては、その着物が親から子、子から孫と受け継がれます。これも着物の良いものは時代を問わず生き続けるという特徴を活かしたものです。

Q:伝統を守りながらの企業発展は非常に難しいことと考えられますが、日々の経営において苦労するエピソードはあるでしょうか。
A:京都商法に基づいた身の丈に合わないことはしない、信用を重んじる経営を行っています。これは常に変化する世の中で無理はしないで伝統を継承しつつ、企業も変化していこうという考えです。苦労したエピソードではないですが、現代生活のカジュアル化により着物を着る機会や環境が減りつつあるのが気がかりです。しかし近年では着物を購入してくださる外国人さんがいらっしゃたりもします。

(3)学生の感想
一見呉服店はCSRに無関係であるように思えるが、他の洋服より無駄のない着物作りはそれ自体でコスト削減につながり、和装産業の活性や染色技術の継承と発展の一翼をになっていることからもわかるとおり、事業そのものが社会貢献につながっているのではないかと感じました。
ゑり善さんのみなさん、お忙しい中インタビューに応じていただき、まことにありがとうございました。ご協力に深く感謝申し上げます。(作成:山川純平)

  




【連絡先】  小関隆志(こせき・たかし)研究室

〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1
 明治大学 経営学部
TEL/FAX 03-3296-2085(研究室直通)
e-mail koseki@meiji.ac.jp